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「胆嚢に癌があるかもしれない」って言われたら?

みなさん、こんにちは。山口大学消化器・腫瘍外科の徳光です。今回は、「胆嚢に癌があるかもしれない」って言われたら、どうしたらいいの?ということに関してお話したいと思います。

よくあるケースとして、検診の超音波(エコー)検査で、胆嚢にポリープがある、とか癌かもしれない(あるいは否定できない)といった影が映って、詳しい検査が必要とされる場合があります。精密検査としては、CTやMRI、あるいはPET検査などを実施される場合もあるかと思います。しかし精密検査を行っても、「胆嚢癌」と確定診断されることはそう多くありません。その理由は、残念ながら胆嚢癌の術前画像診断の精度は決して高くないこと、そして腫瘍の細胞や組織を一部採取して顕微鏡で確認し診断する検査(病理検査といいます)が困難である場合が多いためです。例えば、胃がんや大腸がんであれば、内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラ)を行って腫瘍が確認された場合は、その形状を内視鏡でしっかりと確認できる上、生検といって腫瘍の一部を採取して顕微鏡で癌かどうかを確認することが出来ます。しかし、胆嚢の場合は内視鏡は届きませんので、手術前の検査で癌の診断をつけることは非常に難しいのです。

さらに、実際に胆嚢癌であった場合でも、「早期癌」なのか「進行癌」なのかを、手術前の画像検査で正確に判断することはとても困難です。また「胆嚢癌」と診断された場合の最適な治療は完全切除(つまり手術)ですが、その手術術式は、「早期癌」と「進行癌」で違ったものになります。胆嚢癌の治療成績を悪くする重要な要素として「リンパ節転移」がありますが、「早期癌」ではまずリンパ節転移の心配がなく、胆嚢摘出術のみで治癒する可能性がかなり高いと言えます。一方で「進行癌」ではリンパ節転移の可能性がありますので、胆嚢摘出術に加えて胆嚢の周りのリンパ節まで切除するのが標準的な手術となります。

しかし、本コラムをここまでお読みになった方であればお分かりと思いますが、そもそも胆嚢の病変が「良性」なのか「癌」なのか、癌だとしたら「早期癌」なのか「進行癌」なのかを手術前に決定することが難しいのですから、問題の病変に対してどのような術式を行うのが最も適切かを術前に決定することも、当然難しいのです。

そこで、私たちは「胆嚢癌の疑いがある(あるいは否定できない)」と画像診断でされた場合には、診断的な目的も兼ねてまず胆嚢摘出術のみを行っています。胆嚢の膜を残さずすべて取る(胆嚢全層切除)か、もし腫瘍が胆嚢の隣の肝臓との境界がわかりにくい場合には胆嚢の周りの肝臓も一緒に取る(胆嚢床切除)を行いますが、当科ではこの手術を腹腔鏡で行っています。診断目的の手術であれば、低侵襲な腹腔鏡手術で行うのが最も理想的と考えています。とはいえ、場合によっては肝臓の一部も切除するこの手術は、胆嚢摘出術といってもいわゆる「胆石症」のような良性疾患に対して行われる手術とは異なりますので、専門的に行っている施設での手術をお勧めします。切除した胆嚢の最終診断により、良性あるいは早期癌であれば、本手術のみで治療は完結しますが、進行癌の場合には追加の手術や抗がん剤治療が必要となります。

実際に私たちが「胆嚢癌が疑われる(あるいは否定できない)」と画像診断された方に対して行った診断目的の腹腔鏡手術で実際に「胆嚢癌」と診断された方は、約40%です。胆嚢に異常を指摘されてお悩みの方は、是非当科までお越しください。必要な検査や診断、そして治療に関することまで詳しくご説明させて頂きます。