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胃がんの腹腔鏡手術を受けるなら、外科医を選ぶべき?

近年、消化器がんの手術は腹腔鏡手術やロボット手術などの低侵襲手術が普及しつつあります。がんの低侵襲手術を安全に行うためには高度な技術を要求されるため、日本内視鏡外科学会には技術認定医制度という外科医の腹腔鏡手術の技術レベルが一定水準以上を満たしていることを認定する制度が設けられています。胃がん手術、食道がん手術、大腸がん手術、肝臓がん手術、胆嚢摘出などの複数の分野で審査が行われていますが、合格には厳格なビデオ審査をクリアする必要があり、合格率は20-30%前後と高難度の資格となっています。

外科医間での手術成績の比較はある種タブーと考える向きもあり、技術認定医の資格を持つ医師と持っていない医師で、実際に手術の成績に差があるのかという問いに対しては、過去に目立った報告がないためよくわかっていないというのが現状でした。

しかし、2023年Surgical Endoscopy誌に非常に興味深い論文が報告されました1)。本論文では、日本全体のデータベースを用いて施設間格差、患者因子などを調整した上で胃がん手術後の死亡率、合併症率を、①胃がんの技術認定医、②胆嚢、大腸がんの技術認定医、③技術認定未取得者、でそれぞれ比較しています。その結果、①胃がんの技術認定医は、②胆嚢、大腸がんの技術認定医、③技術認定未取得者にくらべ、手術死亡率や縫合不全などの合併症の頻度が有意に少なかったと示されています。この結果から筆者らは日本内視鏡外科学会の技術認定医制度は手術の質を予測する上で有用な制度であると結論付けています。

胃がんの短期手術成績が胃がんの技術認定医の執刀で最も優れていたとの結果は、餅は餅屋?というある意味で筆者の予想通りの結果でした。

我々、消化器・腫瘍外科学(2外科)の上部消化管チームでは胃がん、食道がんの技術認定医がそれぞれ2名ずつ計4名在籍しています。胃がん、食道がんの手術に際しては技術認定医が常時2名以上手術に入る体制をとっており、患者さんに質の高い手術を提供できるよう診療を行っております。胃がん、食道がんの治療でお悩みの方は、気軽にご相談いただけますと幸いです。

がんの手術は患者さんにとって人生をかけた一大事です。ぜひ、外科医、病院をしっかり選んでいただき、悔いのない医療を受けていただけたらと思います。

(消化器外科医 24年目)

参考文献
1)Skill-qualified surgeons positively affect short-term outcomes after laparoscopic gastrectomy for gastric cancer: a survey of the National   Clinical Database of Japan.
Misawa T, Endo H, Mori T, Yamaguchi S, Inomata M, Yamamoto H, Sakai Y, Kakeji Y, Miyata H, Kitagawa Y. Surg Endosc. 2023   Jun;37(6):4627-4640.