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CAR-T療法の研究

CAR-T療法とは

皆様こんにちは。
私は卒後9年目の消化器外科医で、現在は大学院生としてがん免疫療法の研究を行っています。
がん免疫療法とは体内の免疫細胞によってがんを攻撃する治療法であり、2018年に京都大学の本庶佑教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで免疫チェックポイント阻害薬が話題に取り上げられ、がん免疫療法に注目が集まるようになりました。

私はこのがん免疫療法の中で特にCAR-T療法というものについて研究を行っています。
CAR-T療法とは、特定の抗原を持ったがん細胞に対して免疫応答を起こすために患者さんの血液中のT細胞という免疫細胞を改変して作製したキメラ抗原受容体導入T細胞 (Chimeric antigen receptor T cell、CAR-T)を用いた治療法です。リンパ腫や白血病といった血液のがんに対してCD19という抗原に対するCAR-Tが臨床で使用されており、高い治療効果を発揮しています。

しかし、がんの多くを占める胃がんや大腸がん等の「固形がん」に対してのCAR-T療法は未だ十分な治療効果を発揮できていません。固形がんではCD19の様な適切な抗原を選択することが難しいこと、CAR-Tをがんの場所に送り届けることが難しいこと(血液のがんでは血管の中でCAR-Tが腫瘍を攻撃することができるが、固形がんではCAR-Tが血管の外に出てがんの存在する場所に集まる必要がある)、固形がんは体内の免疫から逃避する能力が高いこと等がその理由です。

私は消化器外科医であり、固形がんを扱う診療科ですので固形がんに対するCAR-T療法の研究に携わっています。CAR-T療法は免疫チェックポイント阻害薬に続くがん免疫療法として期待されている治療法でもあり、1日でも早く患者さんに届けられる様に日夜研究に励んでおります。