こんにちは。卒後12年目、消化器外科専門医です。
ご存じの方も多いでしょうが、我々は病院に勤務する医師である以上、定期的に当直業務が回ってきます。
当直中は緊急手術以外にも、救急で来院された患者さんや、入院患者さんの対応もしますので、タイミングが悪ければ一睡もできないなんてこともあります。

ところで我々の業界では、太古の昔より『今夜は暇だなぁ』と口にすると急に忙しくなるという都市伝説があるため、たとえ暇であってもそれを口にすることは罪深き所業と考えられています。
そして、どうやらこの都市伝説は海外にも存在するようです。2019年にBMJという権威ある医学雑誌に掲載された論文で、英国のある病院において、医療スタッフが意図的に『今日は暇な日になりそう』と言った29日間と、あえて『暇』という言葉を言わないようにした32日間とを比較し、電話対応や検査といった仕事量に差があるかを検証した愉快な研究があります¹⁾。
その結果、『暇』と言っても仕事量は変わらないという結論となり (正確には非劣勢試験としてデザインされてます)、この都市伝説は否定されてしまいました。というわけで、今度から暇なときは素直に『暇』と口にするようにしたいと思います。

1) Brookfield CR, Phillips PPJ, Shorten RJ. Q fever – the superstition of avoiding the word “ quiet” as a coping mechanism: randomized controlled non-inferiority trial. BMJ. 2019 Dec 18; 367: l6446. doi: 10.1136/bmj.l6446.