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腹腔鏡での肝切除って、どうなの?

腹腔鏡手術とは

みなさん、こんにちは。
山口大学消化器・腫瘍外科の徳光です。
今回は、私たちが行っている肝切除術のうち、主に腹腔鏡手術に関してお話したいと思います。

腹腔鏡手術は、おなかの中をカメラで除きながら小さな傷から細長い道具を使って行う手術で、
胆石症などの良性疾患に対する手術からはじまり、現在大腸がんや胃がんなどの消化管のがんに対して多くの施設で行われるようになっています。
おなかを開ける開腹手術に比べると体に優しい低侵襲手術として知られている術式です。

では、肝臓の手術に関してはどうでしょうか。
腹腔鏡肝切除術の歴史はまだ浅く、2010年に腹腔鏡下肝部分切除術・外側区域切除術という術式に限定して保険適応となり、
これより大きな範囲の肝切除、複雑な肝切除に対しては一定の施設基準を満たす施設でのみ2016年より保険適応となったばかりです。
消化管のがんに比べると、まだまだその普及率は低く限られた施設でしか行われていないのが現状です。
その理由は、肝臓にはたくさんの血管や脈管が複雑に走行しており、
これらを切離しながら腹腔鏡で手術を行うには高度な技術が必要となるからです。

腹腔鏡で肝切除を行うメリット

では、腹腔鏡で肝切除を行うメリットとはなんでしょうか。
一般的には傷が小さくなることによる整容性(見た目)の向上、痛みの軽減、入院期間の短縮などがあげられます。
特に肝切除は開腹で行った場合、いわゆる体の真ん中を切る切開(正中切開といいます)のみでは対応できない場合も多く、
腹筋を横切るJ字切開、ベンツ切開とよばれるような他の消化器がんとは比較にならないくらい大きな切開を必要とする場合があります。
これを考えると、傷の縮小率から考えれば他のがんの手術よりも大きなメリットがあるといえるかもしれません。
また、腹腔鏡手術は一般的に炭酸ガスをおなかの中に入れておなかを膨らませながら手術をおこないますが、
この炭酸ガスの圧(気腹圧といいます)によっておなかの中を圧迫しながら手術が出来るので、静脈という血管からの細かな出血を減らすことが可能です。
さらに肝切除の対象となる肝細胞癌、転移性肝癌は繰り返し肝切除を行うことが多い疾患です。
腹腔鏡は一般的に開腹手術と比べると術後のおなかの中の癒着(臓器同士がベタベタくっつくこと)が少ないことが特徴ですので、
2回目以降の手術の際にも再度腹腔鏡手術が可能となることも多いです。
初回手術の際にどのような手術を受けるかが、いかに重要かということが言えると思います。
ここまでとてもいいことずくめのようですが、開腹手術と同じ内容を腹腔鏡で行う場合にはどうしても手術時間は長くなります。
ただ最近は麻酔がとても進歩していますので、手術を受けられる皆さんには時間が遅くてもそんなに心配しないでください、と説明しています。

当科は上記の複雑な肝切除に対応できる施設基準を満たしており、かつ全肝切除のうちの約70%以上を腹腔鏡手術で行っています。
本術式に慣れたスタッフが複数名存在し、肝臓の手術で内視鏡外科技術認定医を取得した者が2名常勤しています。
さらに今年からは、保険収載となったロボット支援下肝切除も開始しており、肝臓の低侵襲手術に積極的に取り組んでおります。
もし肝切除でお悩みのことがありましたら、是非当科にお越し頂ければと思います。