医療コラム
外科教育
「手術の質は、術前の準備で決まる」と言っても過言ではありません。
では近年の若手外科医は、日々どのように手術手技向上に努めているのでしょうか?
私が研修医であった20年前は、手術書で解剖や手術手順を学習し、トレーニングキットで練習する程度でした。
先輩方に直接ご教授いただけることは少なく、「俺の背中をみて覚えろ」的な教育を受けていたと記憶しています。
しかし現在は大きく変わり、より質の高い準備ができるようになっています。
その1つは、高速インターネット環境が整ったことで、
全国の御高名な外科医の手術動画を高画質でいつでもどこででも閲覧することが出来るようになったことです。
執刀するためには手順を理解するだけでなく、一つ一つの手順をどのように完遂するか具体的に知っておくことも重要で、
スペシャリストの手術動画を閲覧することで高い学習効果が得られるわけです。
さらに、新たな手術手技が発表された際にも、この環境下であれば、いち早く取り入れることができます。
2つ目は、カダバートレーニングが可能になったことです。
カダバートレーニングとは、ご遺体を使用した手術手技トレーニングのことです。
本邦では医療安全に関する社会的な関心が高まり、
2012年に「臨床医学の教育研究における死体解剖のガイドライン」が公表されました。
より生体に近い状況でのトレーニングであるため、
若手外科医だけでなくベテラン医師にとっても手術手技習得に極めて有効な手段であります。
本トレーニングが可能になった背景には、
御献体を希望されたご本人とそのご家族の方々のご理解とご協力があることは言うまでもありません。
山口大学でも、2019年から同ガイドラインに遵守したカダバートレーニングを行っています(写真)。
今後も、若手外科医が技術を向上させながら不安なくキャリアアップし、
その結果患者さんへ安全で安心な外科治療を提供できるように努めてまいります。
卒後22年目、消化器外科専門医