医療コラム
若手外科医の手術手技の向上に関して
みなさんこんにちは。山口大学大学院医学系研究科消化器・腫瘍外科の小佐々と申します。
今回は若手外科医が手術手技の向上のため日頃どのように取り組んでいるかお伝えしたいと思います。
患者さんやそのご家族は若手外科医(医師10年目くらいまででしょうか)が執刀すると聞くと少し不安を感じるかもしれません。
また、医学生や初期研修医のみなさんは若手外科医がどのようにトレーニングを積んでいるか進路を決める上で気になるところだと思います。
現在、当教室若手ではドライボックストレーニングに積極的に取り組むようにしています。
具体的には、写真のように腹腔鏡のトレーニングボックスで持針器や鉗子を使い、針や糸を使って運針や結紮の練習をしています。単純な作業のようですが、最初は思い通りに動かすのが意外と難しいです。慣れてくると飽きるので鉗子を扱う場所を変えたり、実際の手術の動画の動きを真似したり(air surgeryと呼ぶようです)とトレーニング法をアレンジしています。このコツコツとしたトレーニングは一見地味に見えますが、実際の手術においてその修練の差が如実に現れてきます。運針や結紮が上手な外科医は手術も上手です。もちろん観察力や解剖の知識、手術戦略も外科医として重要な能力ではありますが自分の思い通りに正確に鉗子動かせなければ意味がありません。
また、最近はyoutubeなどSNSで流行している腹腔鏡で折り鶴をするトレーニングも行っています。紙という繊細なものを扱うため、実際の手術で必要な、愛護的で正確な操作の訓練ができると思っています。
私たち若手外科医は日々の診療の合間をぬってトレーニングに励んでいます。若手であればそれほど多くの執刀や手術が回ってこないこともまた、事実です。しかし、必ず順番は回ってきます。自分の番が回ってきたときに、安全な手術ができ、きれいで無駄のない手術ができるためにこの下積みの時期は非常に大切な期間だと思います。そういう気持ちで上記のトレーニングを行っています。
少し長くなりましたが、
手術を受ける方々は若手外科医が日頃のトレーニングを積んだ上で手術に臨んでいることを知っていただき、安心して手術を受けていただきたいと思っています。また、外科を目指す医学生・初期研修医のみなさんには、当教室では若手が一丸となって技術向上に励む流れができつつあることを知っていただき、将来一緒に仕事ができればと思っています。
山口大学大学院医学系研究科消化器・腫瘍外科
平成27年卒 外科専門医
小佐々 貴博
若手で取り組みを始めている様子 トレーニングボックス